2010年05月28日

【虐待はどんな傷を残すのか】(3)ネグレクトからの救出(産経新聞)

 ■回復の鍵は「愛着」

 38年前の昭和47年、中部地方の小さな町で6歳女児と5歳男児の姉弟が実父により、犬小屋同然のトタン小屋で1年半にわたり監禁される事件があった。

 救出後、特別な治療教育チームが組まれ、約20年に及ぶ発達支援が行われた。重大なネグレクト(育児放棄)から救出された子供の「その後」の詳細な記録は、世界中で6例しかない。

 チームの一員だったお茶の水女子大学の内田伸子教授(64)=発達心理学=は「救出時は2人とも身長80センチ、体重8キロほどだった。言葉は一言もしゃべらず、歩行もできず、はうのがやっと。どう見ても1歳半程度で、発達の遅れは恐ろしいほどだった」と振り返る。

 当時の報道などによると、左官だった37歳の父親は酒びたりで、39歳の実母がミシンの内職をしていた。子供7人が毎年生まれ、母親は子育てを投げ出した。姉弟は排泄(はいせつ)のしつけさえできておらず、「畳を汚す」と怒った父親はトタンで囲った屋根のない小屋を建て、むしろを1枚敷き、毛布1枚を与えて閉じ込めた。

 食事は小皿に盛られ、1日1、2回。当初は姉弟の下の乳児も一緒だったが、肺炎で死亡した。見かねた住民が町役場へ連絡した。救出時、2人は丸裸で骨と皮だけになり、仮死状態で横たわっていたという。

 ≪目覚ましい発達≫

 施設へ保護された2人は、栄養条件が改善され身長や体重がみるみる増えていった。遅れていた知的・言語的な能力を発達させるための訓練を受け、2年遅れで小学校へ入学した。

 内田さんは「目覚ましい発達の鍵となったのは、保育士の女性との『愛着』の成立だった」と指摘する。

 愛着とは、乳幼児期に母親など1人の養育者と結ばれる強い絆(きずな)のことで、通常、生後12カ月前後で成立する。「人見知り」も同じころピークを迎えるが、これも養育者との愛着の裏返しであり、健全な発達ぶりを示すものだ。

 姉と弟のうち、姉は保育士にすぐなつき、愛着の成立と同時に言語や社会性などさまざまな面が順調に発達していった。一方の弟は保育士になじめず対人関係の遅れが目立った。保育士を代えると弟は新しい保育士になつき、猛スピードで追いついたという。

 ≪人間は変われる≫

 「この姉と弟ほどまでは重度でないものの、似たような子供は今、施設の中にごっそりいます」

 「子どもの虹情報研修センター」の増沢高研修部長(48)はこう話す。

 食べ物をかみ砕く体験がなくサバの煮つけを丸のみする女の子。食事がハンバーガーばかりで濃い味つけを好み、調味料をどっさりかける男の子。トイレ以外の場所で平気で排泄し、お尻をふかない子供たち…。ネグレクトの結果、基本的な生活習慣さえ身についていない子供が目立つという。

 増沢さんは「『この家庭環境は何? この成育状況は何?』という子供は少なくない。だが、愛着は親とだけでなく施設の保育士や里親とも結び直せる。人間は変われる。そのことをこの姉と弟は証明している」。

 姉は現在、3児の母。弟はサラリーマンで1児の父という。内田さんは2人のことを講義で伝えている。女子学生は感想をこうつづった。

 ≪異常な環境で育てられたにもかかわらず回復していく様子は見事としか言いようがありません。今、救出後にしっかりと面倒を見てもらえる子はどれほどいるのでしょうか。救出されずに今も虐待されている子、救出されたものの適切な治療を受けられない子のことを考えると胸が痛みます≫

 入所する子供の7割が被虐待児という児童養護施設を訪ねた。

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2010年05月15日

親子3人はねられ死亡 パンク修理中、トラック突入 中央道(産経新聞)

 8日午前9時25分ごろ、甲府市下今井町の中央自動車道上り線で、乗用車を路側帯に止めてパンク修理中だった男女3人が大型トラックにはねられ、死亡した。山梨県警高速隊は自動車運転過失致死の現行犯で、トラックを運転していた広島県福山市箕島町、運転手、田中満容疑者(38)を逮捕した。

 高速隊によると、死亡したのは山梨県甲斐市篠原の同県職員、吉野正寛さん(57)と妻の恵美子さん(49)、長男の雄太さん(22)。3人は家族ら計5人で移動中に、パンクした右後輪のタイヤを修理するため車外に出ていたという。ほかの2人も車外にいたが無事だった。

 同隊は、走行車線を走ってきたトラックが3人をはねたとみて、事故当時の状況を詳しく調べている。

 現場は甲府南インター近くの橋上で、緩やかなカーブだが見通しはいいという。吉野さんの車は車線にはみ出して止まっていた。事故の影響で、中央道上り線は甲府昭和−甲府南インター間が約4時間通行止めとなった。

 田中容疑者の勤務先の関係者によると、田中容疑者は7日、広島県を出発し、埼玉県に荷物を運ぶ途中だった。

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